ご予約・お問い合わせはTEL.072-696-3010
〒569-0824 大阪府高槻市川添2-2-21
ライフスタイルや食生活などの変化から、日本では乳がんにかかる女性が年々増加しています。今では毎年86,000人以上の女性が乳がんと診断されており、胃がんや大腸がんを抜き、今や乳がんは女性がかかるがんの第1位となっております。
女性の生涯を通してみると、乳がんの発症率は12人に1人にもなります。また、乳がんは20代から85歳以上の方まで、どの年齢層も罹る病気です。年齢別乳がん罹患率(図1)を見ますと30代で増えてきて、40代後半から50代前半にかけてピークを迎えます。つまり、20歳をすぎれば「乳がん」年齢なのです。
私はまだ若いから、あるいは高齢だから大丈夫と安心していませんか。女性である以上、乳がんはどんな人にも忍びよる病気であることを忘れないでください。また、乳がんによる死亡も年々増加し、女性の壮年層(30代~64歳)の死亡原因の第1位となっております。特に、家庭にとっても社会にとっても重要な時期の40歳代の女性で急上昇しています(図2)。
厚生労働省の調査では、2013年に乳がんで亡くなった女性は13,148人で1958年の約8倍にものぼっています。
図1
図2
乳がんの発生や増殖には、「エストロゲン」と呼ばれる女性ホルモンが深く関っています。
乳がんが増加している背景には、女性の社会進出に伴う晩婚化や、食生活やライフスタイルの変化などで乳腺がエストロゲンにさらされている時間が長くなったことが要因として考えられています。
また、閉経後は、エストロゲンが脂肪細胞で作られるため、閉経後に肥満している女性では、乳がんのリスクが高くなるとも言われています。
しかし、ライフスタイルが多様化している今、それらを否定することはできません。大切なことは、乳がんの早期発見と早期治療なのです。
乳房は皮膚と脂肪組織と乳腺組織からできています(図1)。
乳腺は、母乳をつくる小葉と、母乳を乳首まで運ぶ乳管に分かれていて、これら乳管と小葉に発生する悪性の腫瘍が乳がんです。
がんは最初のうちは乳管や小葉に留まっています(“非浸潤性乳がん”といいます)が、やがて乳管・小葉の壁を破壊し(“浸潤性乳がん”といいます)増殖します(図2)。
図1:正常乳腺の仕組み
図2:非浸潤癌と浸潤癌
がん細胞が増え始めると「しこり」として触れるようになり、ほとんどの人は、この「しこり」によって乳がんを発見します。
しかし初期の乳がんでは食欲がなくなったり体調が悪くなったりといった全身症状はほとんどありません。
このため唯一の手がかりともいえる「しこり」に気づかずにそのままにしておくと、がん細胞は増殖し乳腺だけにとどまらず、血管やリンパ管を通ってわきの下のリンパ節や肺、骨など全身に広がります。
このことを転移といい、命を脅かすことになってしまいます。
「しこり」は大きくなると、転移や治療後の再発の可能性が高くなります。
がん細胞が発生して乳管や小葉に留まっている非浸潤性乳がんは、手術によってほぼ100%治ります。
乳がんをしこりの大きさによって病期別に分類してみると、2センチ以下のⅠ期では、10年生存率(治療をしてから10年後の生存率)が約95%となっています。
しかし発見・診断・治療が遅れると病期が進むにつれて治療後の生存率が下がります(図)。
「全国乳がん患者登録調査報告第29号」より
Tis | 乳管や小葉の中にとどまるがん非浸潤癌(超早期) |
0期 | しこりや画像診断での異常な影を認めないもの |
Ⅰ期 | 2cm以下のしこりで、リンパ節転移がないと思われるもの |
Ⅱ期 | 2cmを超える5cm以下のしこり、もしくはリンパ節転移が疑われるもの |
Ⅲa期 | しこりの大きさが5cmを越えるもの |
Ⅲb期 | しこりが皮膚などに及んでいるもの |
Ⅳ期 | しこりの大きさを問わず、ほかの臓器に転移がみられるもの |
乳がんを発見するきっかけとなる症状の75%以上は「しこり」です。
痛みは原則としてありませんが、乳腺症を合併した場合や特殊なタイプの乳がん(炎症性乳がん)などでは痛みを伴うことがあります。
この他、乳房の皮膚にひきつれやくぼみができたり、乳頭から分泌物が出たり、ただれや変形がおきることもあります。
はじめは分からなくても自分の乳房にいつも関心を持ち、観察する習慣がつくとちょっとした変化にも気がつくようになります。
乳房のしこり | 乳頭の陥没、湿疹、びらん(ただれ) |
乳房皮膚のくぼみ、ひきつれ(図1) | 乳頭からの分泌物 (図2) |
わきの下のグリグリ | 乳房皮膚の色の変化(図3) |
上記のように乳房にしこりが触れたり「何か変だな」と感じた時は(ほとんどの場合は良性の病気ですが)、自己判断しないで必ず乳腺専門医を受診して検査してもらいましょう。
なぜなら、しこりは乳がんの性格によってそのかたさや感じ方がさまざまなパターンがありますから。
図1: 皮膚のくぼみ・ひきつれ
図2: 乳頭からの淡血性の分泌液
図3: 左乳房の皮膚発赤と腫大(炎症性乳癌)
乳房にできるしこりの8~9割は良性の腫瘍といわれていますので、むやみに不安がる必要はありません。
乳房にしこりが出来る病気には乳がん以外に以下の表のようなものがあります。
しこりが乳がんによるものか、その他の病気によるものかを見分けるためには、専門的な知識と検査が必要です。
乳房にしこりを発見したら、自己判断せずに必ず乳腺専門医の診察を受けるようにしましょう。
乳腺線維腺腫 | 10代~30代に多く見られます。 大きさは小豆大から鶏卵大ほどのものまで様々で、複数出来る人もいます。しこりは触れるとクリクリしていて、よく動きます。年齢とともに小さくなることもあります。 線維腺腫の診断がつけばとくに治療の必要はありません。葉状腫瘍と鑑別が必要です。 |
乳腺症 | 30代~40代に多く見られます。 女性ホルモンのアンバランスから乳腺の細胞にいろいろな変化が起こる病気です。症状はゴリゴリとしたまわりとの境界がはっきりしないしこりです。月経前の痛みを伴う場合や乳頭からの分泌物などがあります。 乳がんと紛らわしいので乳がんとの鑑別が大事です。 |
のう胞 | 乳腺症の一症状です。 しこりは分泌液がたまった袋で、風船のように膨らんでしこりとして目立つようになると痛みを伴うことがあります。 |
乳腺炎 | 授乳期に多い炎症性の病気です。 乳汁が詰まったり、授乳中に傷ついた乳頭から細菌に感染して化膿したり、炎症を起こす病気です。乳房が赤く腫れ、痛みや熱、しこりが現れます。炎症性乳がんとの鑑別が大事です。 |
葉状腫瘍 | 20代~30代の人に比較的多いしこりです。 線維腺腫の仲間で良性から悪性まであり、しこりが巨大化することがあります。クリクリとしたしこりで、2~3ヶ月単位で急速に大きくなることが特徴です。 葉状腫瘍と診断されれば切除する必要があります。 |
乳がんにかかりやすい女性の特徴をリスクファクターといいます。
統計的な調査によって乳がんのリスクファクターが明らかになっており、次のようなものがあります。
年齢:40歳以上 |
未婚の人 |
高齢初産の人:出産をしていない人 |
初潮が早く、閉経が遅い人 |
肥満の人、特に閉経後 |
血縁者に乳がんになった人がいる |
良性の乳腺疾患になったことがある |
乳がんになったことがある |
危険因子にあてはまる人が必ず乳がんになるわけではありませんが、そうでない人に比べると乳がんになる確率が高くなります。また、あてはまらないからといって絶対に大丈夫ともいえません。
しかし、乳がんは早期発見・診断・治療をすれば“治るがん”です。決して恐い病気ではありません。
乳がんの早期発見の秘訣は自己検診の習慣を身につけることと、マンモグラフィ検診を定期的に受けることです。
あなたとあなたの大切な人のために、自己検診や乳がん検診で乳がんの早期発見を心がけてください。
早期に発見できれば、治療の選択肢が拡がり命も乳房もあなたの大切な家族も守ることが出来ます。